ねころんでいたらば
うまのりになっていた桃子が
そっとせなかへ人形をのせていってしまった
うたをうたいながらあっちへいってしまった
そのささやかな人形のおもみがうれしくて
はらばいになったまま
胸をふくらませてみたりつぼめたりしていた
八木重吉詩集より
八木重吉(1898-1927)
完璧な愛の家庭を夢みる詩人であった。
神を呼び 自然を語り 妻子を思いつつ 病苦を訴える そのすべてを通じて 哀切きわまりない 叫びのなかに 信仰と詩の合一をめざして 燃焼しつくした いたましくも清冽な30年の生涯。